IMI宣言2021

九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 (Institute of Mathematics for Industry: IMI) は2011年4月に附置研究所として九州大学に開所されて以来, 産業界やさまざまな学術分野と連携・交流を進め, 研究のみならず人材育成においても成果をあげてきました. 2020年度にはIMIを核とした 「マス・フォア・イノベーション卓越大学院プログラム」 が文部科学省の卓越大学院プログラムに採択され, データに対する深い理解をもとに数学モデリング力で多様な分野の研究者と共創・創発できる人材の育成に邁進しています. また,国際ネットワークの構築においても重要な役割を担い,特にアジア太平洋地域の産業数学に関わる活動を牽引する機関となりました.

近年,産業の基盤として数学の果たす役割がますます大きくなっています. 欧米では数学の社会的意義が古くから認識されていますが, 我が国においても一昨年に経済産業省と文部科学省による報告書 「数理資本主義の時代~数学パワーが世界を変える~」 が出され, 第四次産業革命を主導して行くために欠かせない科学として, 数学の重要性が強調されています. 同時に,使われる数学も拡がりを増し, 数値解析や数理最適化,統計学など従来から産業との結びつきを見せていた分野だけでなく, 代数学や幾何学など産業との関わりが目立っていなかった分野 においても,情報・材料・生命・エネルギー・金融・法律など幅広い学 術分野と連携し,関連する産業の発展に寄与する例が増えています. 当研究所の名前にある「マス・フォア・インダストリ (Mathematics for Industry: MfI)」は,このような社会・学術両面からの要請に応えるための,従来の分野の壁を超えた新しい数学を指します.

当研究所が2021年に10周年を迎えるにあたり, 私たちが取り組んできた異分野との連携や交流のさらなる推進と, 産業における技術革新に寄与する新しい数学の創出を目指すために, ここにその決意を示すとともに,諸方面に一層のご協力をお願いすることとなりました. IMIは今後も MfI の拠点として, 産業界と共に,新しい数学の研究領域である産業数学の深化を推進し, 産業に対する高い意識と数学能力を備えた人材を育成し, 産業に数学を活かす有機的な連携を創出することで, 産業数学発展の礎となって社会に貢献することを宣言します.

九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所

所長 佐伯 修

使 命

  • 産業におけるさまざまな問題の解決と,大学が産業界と協力して問題解決に取り組むための仕組みの整備
  • 産業へ貢献できる高い数学能力と共創力を備えた人材の育成と,そのために必要なシステムの構築
  • 産業界と大学間の交流を通じて, 産業における技術開発の飛躍的進歩を促し, イノベーションを創出する新しい数学の開拓
  • 開拓した数学の知見を,産業界に属する研究者・技術者が活用するための支援
  • 金融危機や機械学習の公平性の問題,セキュリティの危殆化といったリスクを避け,数理的手法が正しく社会実装されるための啓蒙

活 動

  • 文部科学省認定の共同利用・共同研究拠点「産業数学の先進的・基礎的共同研究拠点」として,産業界と大学間の交流を促進して相互理解を深めるため,各種イベントやネットワーキングの機会を提供します.1社では難しい先進的なプロジェクトに挑戦するためのパートナー探しをお手伝いします.
  • 産業数学の最新の情報提供,産業における課題の共有,新研究テーマの発掘などを目的として,セミナーやチュートリアルを企画します.
  • 産業界と大学の共同研究を推進するため,課題の受け付け・マッチング・新規研究開発の開拓を行います.また,IMI 所属研究者による技術相談サービスを提供します. (文部科学省科学技術試験研究委託事業「数学アドバンストイノベーションプラットフォーム(AIMaP)」で構築したネットワークを活用します.)
  • 産業の技術革新を創出する新しい数学を開拓する場として,あるいは開拓した高度な数学の知見を産業界で活用する人材を育成する場として,イベントの企画運営を行います.特に,産業界からの問題提起を受け,その解決を探るスタディグループ・ワークショップ(Study Group Workshop: SGW) を毎年開催します.
  • マス・フォア・イノベーション卓越大学院をはじめとして,産業数学を担う人材の育成を推進します.また,意欲ある学生を経済的に支援します.
  • 長期研究インターンシップを積極的に実施し,学生の産業現場における問題解決能力を養成するとともに, 企業が高度数学人材を業務に活用する機会を増やします.また,企業と大学双方を利するインターンシップの より良い形を常に検討し,提案します.
  • マス・フォア・イノベーション卓越大学院を中心として,産業界の技術者・研究者を社会人ドクターとして受け入れる体制を整えます.
  • 産業界が大学へ研究者を派遣し,講義やセミナーにより大学院生の教育に参画する場を整備します.
  • 大学が産業界へ研究者を派遣し,講義やセミナーにより技術者の数学的知見獲得を支援する活動を行います.
  • 学術論文や解説記事,書籍発刊による最新の成果の公開に加えて, ニュースレターや講演会などのアウトリーチ活動を通じて,産業数学に関する情報発信と啓蒙活動を行います.
  • 海外の学術機関や企業と連携し,国際ワークショップ開催や学生の派遣・受け入れを通じて, 国際的なネットワークを構築します.
  • 海外の産業界の数理科学的研究動向について, 国の機関とも連携協力して情報収集を行い,その共有を図ります.

ご協力のお願い

産業数学の発展には,IMIの努力に加えて皆様のお力添えが欠かせません. IMI宣言2021へ賛同いただける企業・学術団体・個人の皆様には,ぜひこちらの

ウェブフォーム

にて登録をいただいて,以下のいずれか一つ以上の項目でご協力を検討くださいますと誠に幸いです. どうぞよろしくお願い申し上げます.

  1. (企業・団体) 博士課程学生の長期研究インターンシップ (3ヶ月以上) の受け入れ(インターン課題について,対象学生がIMI所属研究者の指導を受けながらインターンを行うなど,柔軟な形式も選択できますので,ご興味がありましたら下記問い合わせアドレスよりご連絡ください.)
  2. (企業・団体) ポスドクを含めた高度数学人材の雇用と,数学人材を活用するための柔軟な採用形態の整備
  3. (企業・団体・個人) 共同研究・委託研究
  4. (企業・団体・個人) セミナーやワークショップへの講師派遣
  5. (企業・団体・個人) ワークショップなどへの参加ならびに開催支援
  6. (企業・団体・個人) 九州大学基金の使途特定寄附「産業数学人材育成プロジェクト」へのご寄附(「寄附目的」より「産業数学人材育成プロジェクト」をご指定ください)

お問い合わせ:マス・フォア・インダストリ研究所 IMI宣言2021事務局
manifesto21"@"imi.kyushu-u.ac.jp

(引用符は外してください)